【gambaletta odex 四人通信】 vol.3

テーマ:ワインの歴史、未来、可能性

55年55カ国海外を飛び回り、ワイン文化を現地で見届けてきた私事nino喜寿77歳。この50年アンジェロ・ガイアの動向を見続け、アンジェロとは今でも家族ぐるみのお付き合いをしています。25年前テルモと付き合い始め現在にいたります。今号と次号で、私が大きく2つのVISIONで、これからのワインの可能性を語ります。

安旨スペインワインのベストセラー「エルカビオ」のMás que Vinosも醸造にアンフォラを使います。ラ・マンチャは乾いた大地ですが、実はこの暑くて乾燥した環境こそぶどうに最適。写真は左から醸造家のマイ、ゴンサロ、アレハンドラの黄金トリオ。

VISION① イベリアがフランスを抜く

◯ワインは地中海のギリシャからフランスへ

ワインの起源は約5000年前にさかのぼり古代ギリシャとジョージアが発祥の地です。もともと古代ギリシャの文化だったワインが、やがてナポリを通じて古代ローマに入りました。その後シーザーがフランスを征服する時代にローヌ川を越えて北地ブルゴーニュへ、西に流れてボルドーへと入っていきました。フランスは約400年前から国が豊かになるとワインに質を求めるようになりました。そこでテロワール、グラン・クリュ、畑の選別化などの考え方が出てきて、嗜好品としてワインを愉しむ文化が定着していきました。 フランスは、自国にワイン醸造とぶどう栽培を定着させるために繰り返し努力をしてきました。本来ならもっと南の環境で育つぶどうを適応させるため、品種改良をし、肥料を使い、寒冷地のシャブリでは収穫時にストーブを使います。こうしたフランス人の努力は途方もないもので賞賛に値します。一方、ワインの質を維持するためにコストがどんどんかかり、ぶどうも肥料を使うのが当たり前になっていきました。今流行しているビオはその反動です。

◯地産地消、スペインのアンフォラ、ワインづくりは土の文化

けれども私ninoが世界中のワインを見ていく中で、砂漠に近い環境が一番ぶどうに適していることが分かってきました。具体的にはオリーブ、イチジク、アーモンドが育つ乾燥した土地で、そこではぶどうもよく育ちます。私が付き合ってきたスペイン人たちはフランスより貧乏で肥料を買うお金もありませんでしたが、暑い産地なので病気が広がらないため、そもそも肥料がいりません。スペインのテロワールを見ると、暑くて乾燥している土の文化で、ワインにぴったりなのです。アンフォラ(巨大な土器)でのワインづくりがその代表例です。 こうした土地でフランス産バリックを持ち込むと、かえってとても高くつきます。地産地消の観点から言えば、バリックをスペインで使うのが果たして正しいことなのか、私は疑問を抱いています。今やワインづくりは世界中に普及しましたが大半はフランスの真似をしてきました。世界各地でバリックやステンレス樽が使われ、人々はカベルネ・ソービニョンやシャルドネに夢中になりました。例えばイタリアのトップとされるサッシカイアやオルネライアは、ボルドー市場経由でワインを売っています。イタリアのボルゲリもアメリカのカリフォルニアも、フランスの真似と言えるかもしれません。

バレンシアのceller del roureのアンフォラ。バリックを使わず、土の文化を蘇らせたワインづくりの先駆的存在。NHKの『旅するスペイン語』でも紹介されたワイナリー。ラベルはトンボのデザイン。赤とんぼはガルナッチャ主体、黒とんぼは土着品種マンドー90%、黄とんぼはマンドー100%。

◯この50年のアンジェロ・ガイア、25年前と今のテルモ。これから25年後の展望。

私はこの50年、イタリアの巨匠アンジェロ・ガイアの動向を見続けました。アンジェロは一時期フランスの国際品種に手を出したものの、最終的にはイタリアの土着品種を見事に復活させ、フランスのトップワイン生産者たちと肩を並べるまでになりました。そして今から25年前に私はスペインのテルモと知り合いました。スペイン固有の文化、土着品種、テロワールを復活させることに情熱をかけている当時の彼を見て、私は「スペインで一番有名な男になる」と予言し、そのメッセージを伝える広告にはポンテ・ベッキオの山根さんに出ていただきました。そして25年経った今、テルモは本当にスペインで一番有名な男になりました。次世代のスペインの新しい生産者たちも、テルモを追いかけてすごいエネルギーをもっています。 さらに隣国ポルトガルにもぜひ目を向けていただきたいと思います。ポルトガルは自国市場がスペインより小さい反面、国際市場が大きいです。海洋国家で文化的に豊かな国で、エンゲル係数がヨーロッパで一番高い国です。ワインのテロワールで言えば、一番ぶどうに適した気候に位置しています。ポルトガルの土着品種の中でもアルバリーニョとトゥリガ・ナショナルが私は大好きですが、この2つは2019年からボルドーで植えてもいいことになりました。ワインの動向を50年間見てきた中で、これからはポルトガルがぐんぐん伸びると肌で感じます。ドイツやフランスなどかつての経済大国が力を失ってきている今、ヨーロッパの南の国々は、アジアの南の国々と同じように、エネルギーに満ちていて勢いづいています。

そしてこれから25年後には、スペインとポルトガル、つまりイベリアの生産者たちがボルドーの5大シャトーを超えるワインを生み出していると確信します。

スペインを変えたテルモ
カメレオン・アルバリーニョのジョアン
CARMのフィリッペ