旅のレポート:初夏の南房総 2025年4月24日(木)・25日(金)

宿泊した勝浦の「旅館 松の家」の玄関で8代目女将・渡辺久恵さんと記念撮影する森夫妻

オーデックス・ジャパンの森夫妻は2025年4月24日(木)・25日(金)、ワインを提供するアイデアをリサーチする一環で、千葉県南部の商業施設をめぐりました。旅の模様をお伝えします。

◾️4月24日(木) 18:00 千葉県勝浦市

1. 旅館 松の家

旅館 松の家 外観

⚫︎スポットガイド

旅館 松の家(まつのや)は、江戸時代末期に創業した旅館。現在の建物は昭和初期に建てられたもので、2003年に国の登録有形文化財に登録された。

①外観

旅館 松の家 外観
旅館 松の家 外観
旅館 松の家 外観 森夫妻は2階右端の部屋に宿泊
旅館 松の家 外観

②内観

旅館 松の家 内観 1階玄関
旅館 松の家 内観 1階玄関
旅館 松の家 内観 1階資料室
旅館 松の家 内観 2階
旅館 松の家 内観 2階
旅館 松の家 内観 2階
旅館 松の家 内観 2階

③客室内(2階3番の部屋)

客室内
客室内
客室内
客室内
客室内
2階客室から通りを望む

④ディティール

ルームキー
左から、客室置かれた勝浦市のパティスリーキリカワのお菓子「ひらきごま」、お土産にいただいた箸、松の家の特集が掲載された地域フリーペーパー「いすむすび」2024年2月10日発行第4号
館内の資料室に置かれた女将おすすめの写真集「海女の群像」。写真家・岩瀬禎之(いわせ・よしゆき 1904〜2001)が地元の千葉県御宿海岸で海女の活動を1930年代から60年代まで撮影したもの。内閣総理大臣賞受賞
資料室に展示してある1950年代のテレビ。当時テレビは高額で、力道山のプロレスの試合を観るために近所の人が集まったという。右は海女が防寒のために着た磯じゅばん
玄関の色紙。来訪した鶴田浩二など、映画俳優のサイン
玄関の色紙。来訪した山口百恵のサイン。 アイドルとして人気絶頂期に出演したTBS のテレビドラマ「赤い衝撃」(1976年)の撮影で松の家を訪れたときのもの。サインを見ていたら松の家の代表取締役・渡辺幸男さんが来て「たいへんな騒ぎでしたよ」と回想された

④夕食

部屋食の夕食を楽しむ森夫妻。ドリンクは持ち込み自由。森夫妻は持参した自社のワインを合わせる
地魚のお刺身。左からブリ、マダイ、サワラ、カツオ、サーモン、マグロ
焼き魚
揚げ物
オーブン焼き
鍋物
茶碗蒸し
小鉢料理
小鉢料理
お吸い物
ごはん
果物

⑤朝食

部屋食の朝食を楽しむ森夫妻
焼き魚
サラダ
小鉢料理
小鉢料理
小鉢料理
香の物
納豆とごはん

⑥女将にご挨拶

玄関で8代目女将・渡辺久恵さんと談笑する森夫妻

松の家が国の登録有形文化財になった経緯は、ある日、文化庁や県庁、大学教授などが視察に訪れたことにはじまります。

後日、市役所を通じて、文化庁から国の登録有形文化財にしたい意向があること伝えられ、承諾し、登録手続きをしました。

その決め手は、珍しい木材がたくさん使われて面白いと評価されたことだそうです。

文化財に登録されると、建物に手を加えてはいけなくて、苦労するのでは、と言われることがが多いけれど、実際にはそのようなことはなく、古いものを残しつつ、壊れたところを直す程度ならよい。ただし、修繕費を国が補助することはないそうです。

その一方で、登録有形文化財になると、テレビや雑誌が取材に来て、旅館の知名度が上がり、興味を持って宿泊に来るお客さまや、若いお客さまも増えた。

登録の10年くらい前は、今風の建物に全面改装しようと考えた時期もあったけれど、ホテルには勝てないし、独自性が出せなくて苦悶。しかし、登録後は、逆に今のままがユニークだと考え、自信が持てるようになったという。

ニーノ(森俊彦)が8代目女将の渡辺久恵さんに、1967年に竣工したオーデックス・ジャパンの社屋「グラスハウス1」の写真を見せると、女将は「木のお家。木はいいです。木は古くなっても味が出る。今の建築は古くなると汚くなる。木の場合は、艶が出てぜんぜんちがう」と語りました。

女将はニーノ(森俊彦)より一歳年下の1945年生まれ。現役の女将として元気にお客さまに声をかけ、地元の商工会議所の会合に出かけられた。

旅館 松の家 外壁に掲示されている登録有形文化財のプレート

◾️4月25日(金) 6:40 千葉県勝浦市

2.覚翁寺

覚翁寺 本堂

⚫︎スポットガイド

覚翁寺(かくおうじ)は、松の家の近くにある浄土宗の寺院。慶長年間(1596〜1615)に、植村泰忠(うえむら・やすただ)が開いた。植村泰忠は徳川家康の家臣で、家康の江戸入府に伴い、勝浦の領主になる。その菩提寺として建てた寺。植村泰忠は勝浦朝市も開いたことでも知られる。

覚翁寺 山門

覚翁寺 由緒書き 

◾️4月25日(金) 7:00 千葉県勝浦市

3.勝浦朝市

勝浦朝市 スパイスコーヒーハウス

⚫︎スポットガイド

勝浦朝市は、1591年に勝浦城主であった植村泰忠が農水産物の交換の場として開設したのが始まりとされ、430余年の歴史がある。石川県の輪島朝市、岐阜県の宮川朝市とともに、日本三大朝市のひとつとされる。

①スパイスコーヒーハウス

勝浦朝市 スパイスコーヒーハウス

⚫︎スポットガイド

スパイスコーヒーハウスは、創業者の紺野雄平さんが、大学卒業後の2015年に「人が集まる場をつくりたい」という思いで、自転車屋台で起業したコーヒー店。2022年から実店舗を開店したが、ルーツの勝浦朝市での自転車屋台の出店を続けている

勝浦朝市 スパイスコーヒーハウス
勝浦朝市 スパイスコーヒーハウス
勝浦朝市 スパイスコーヒーハウス
勝浦朝市 スパイスコーヒーハウス
勝浦朝市 スパイスコーヒーハウス
勝浦朝市 スパイスコーヒーハウス

②暮ラシカルデザイン編集室

勝浦朝市 暮ラシカルデザイン編集室 屋台で本を販売する沼尻亙司編集長

⚫︎スポットガイド

暮ラシカルデザイン編集室は、編集長の沼尻亙司(ぬまじり・こうじ)さんが「千葉・房総の名刺となる本をつくり、届ける」をコンセプトに、千葉県の魅力を伝える本を自費出版している。沼尻編集長が企画、編集、取材、撮影、執筆、製本手配、販売、発送をひとりで手がけている。「いま、本は、出版社を通さなくて売れます」と語った。

勝浦朝市 暮ラシカルデザイン編集室 屋台で本を販売する沼尻亙司編集長
勝浦朝市 暮ラシカルデザイン編集室 本で紹介した千葉県八街産の落花生 
勝浦朝市 暮ラシカルデザイン編集室 看板
勝浦朝市 暮ラシカルデザイン編集室の屋台で購入した本。左から「房総カフェ5 千葉県のテクスチャー」、「房総落花生」

◾️4月25日(金) 10:10 千葉県勝浦市

4.マリブポイント

マリブポイント 外観

⚫︎スポットガイド

マリブポイントは、2014年に創業し、2021年から現在の場所に移る。

勝浦の海の目の前で、カフェと宿泊施設を営業しながら、サーフボードのレンタルや、サーフボードのロッカー、マリンスポーツ用品や、アパレルグッズの販売などのサービスを行う。

また、サーフィンやSUP、ヨガの技術指導も行っている。

マリブポイント 1階内観
マリブポイント 1階内観
マリブポイント 1階内観
マリブポイント 1階内観
マリブポイント 1階内観
マリブポイント 2階和室
マリブポイントの庭。20年飼育して大きくなった亀

◾️4月25日(金) 11:20 千葉県鴨川市

5.清澄寺

清澄寺 山門

⚫︎スポットガイド

清澄寺(せいちょうじ)は奈良時代の771年、天台宗の寺として創建。若き日蓮聖人が修行をするなど、日蓮にゆかりがあったことから1949(昭和24)年に日蓮宗に改宗し、大本山となった。

清澄寺 清澄の大スギ 樹齢は不明だが「千年杉」と呼ばれ、国の特別天然記念物に指定されている
清澄寺 本堂に登る階段
清澄寺に至る山道にある広重のプレート。浮世絵師・歌川広重(うたがわ・ひろしげ 1797〜1858)
は1852年に清澄寺を参拝。晩年手がけた「山海見立相撲」のシリーズの一枚として描いた「安房清住山」はこの時のスケッチをもとにしたと推定されている。実際のロケ地に立つと、広重が等身大の目線より上からのアングルを想像して描いたことがわかる

◾️4月25日(金) 12:30 千葉県勝浦市

6.鵜原漁港

鵜原漁港

⚫︎スポットガイド

鵜原(うばら)漁港は、房総の景勝地「鵜原理想郷」の入江にある小さな漁港。太平洋の侵食による岩肌の自然芸術が見どころ。

鵜原漁港

◾️4月25日(金) 13:00 千葉県勝浦市

7.市場食堂 勝喰

市場食堂 勝喰 外観

⚫︎スポットガイド

市場食堂「勝喰(かっくらう)」は2016年に、勝浦港市場の前で仲買人が直営する飲食店としてオープン。

市場食堂 勝喰 2階客席 大きな窓から目の前の勝浦港市場が見える
市場食堂 勝喰 ミックスフライ(アジ、マンダイ、シイラ、マグロ、カキ)定食
市場食堂 勝喰 1階店内

8.まとめ

鵜原漁港

今回訪問した商業施設で感じたことは、「千葉愛が凝縮」。千葉の魅力に惚れ込み、それを専業の商売を通じて、自信を持って発信している。

全国で事業を手広く展開することの逆で、ここだけ、これだけに集中している。それだけに芯が強く、中味が濃く、迫力がある。他にないオンリーワンの魅力が、地元の人々と観光客に親しまれ、リピーターを集めている。

その土着感に感じる時間、たとえば店主の人柄とお話、長年使用された建物や道具に見る風格に、タイムスリップ感やたくさんの人々の往来、悠久の時間を感じて癒される。

ただ続けているだけでなく、専業の世界観の表現に統一感があり、センスもしっかりしている。それでも、気負いや気取りがなく、素朴な素顔にあたたかみを感じる。

低予算ながら、思いを伝えるために、宣伝物を手作りしていることも、かえって味になっている。

こうした商業施設は、デジタル主流の時代だからこそ、人間味が新鮮に見え、残したい魅力として共感を得ている。

ニーノ(森俊彦)は「長年観光地として栄えてきたから、店主はみなフレンドリーで、気さくに話しかけてくれる。その一方で、ビジネスの考え方はしっかりして情熱を感じる。

自分たちも、やりたいことのヒントがたくさんあり、勉強になった」と語りました。

(監修:オーデックス・ジャパン 写真・文:ライター 織田城司)

Supervised by ODEX JAPAN  Photo & Text by George Oda