フィリペ・マデイラ

 CARMは、Casa Agricola Roboredo Madeiraの略で、直訳すれば「ロボレド・マデイラ家農園」。旧石器時代の岩絵遺跡が残るコア渓谷考古学公園、ドウロ国際自然公園、そして アルト・ドウロ・ワイン生産地域という、ポルトガルを代表する3つの歴史/自然遺産に囲まれています。この土地では、紀元前2世紀頃にはすでに古代ローマ人がワイン造りをしており、3~4世紀にはその動きが本格化しました。その後に入植したアラブ人がオリーブオイルやアーモンド生産に着手したのが7世紀頃と言われています。

 CARMのマデイラ一家は、 ドウロを見下ろす急斜面の段々畑で17世紀からワイン、オリーブオイル、アーモンド生産を開始。ドウロ河は東西に長く伸びスペインへと続きますが、アルト・ドウロの中でもさらに上流(最も東)、ほぼスペイン国境近くにワイナリーがあります。1995年からは完全有機農法(SATIVA認証 EC Reg. Nr. 2092/91.)へと切り替え、高品質ワインとオリーヴオイルの生産を続けています。2004年には、6カ所に点在する畑(Quintaキンタ)を結ぶ地点にあるマルヴァリアス畑に醸造所を新設。細かい温度管理や、自重を利用してブドウ果汁を動かすことのできる最新の技術を導入しました。

 シストを主とする極端に痩せた土壌、急斜面、そして寒暖の差と少ない雨量という過酷な気候が、ドウロを色濃く特徴づけています。古くからこの地域はポートワインの生産が主だったため、食事用の辛口ワインは、ポートに使用するには品質的に劣るぶどうを原料としていました。そのため、スティルワインは品質重視というより副産物のような存在で、近年まで世界市場で注目されることはありませんでした。しかし1990年代に入ってからは高品質ワイン造りを目的とした生産者が登場。CARMでも、アルコリックで野性的なワインではなく、食事と合わせられる快適な味わいを追求しています。

 最大の特徴は力強さフレッシュさが両立するテロワール。土壌はあくまでシストが主ですが、赤ワイン用の畑の一部は花崗岩で、南もしくは西向きの斜面。極度の乾燥のために根は水を求めて地中深くまで根が下り、ワインに力強さ、逞しさを与えます。一方、標高は最高650mで北東の斜面を含んでいる箇所からは主に白ぶどうが栽培されており、新鮮なアロマ、若々しい酸とミネラルを持つワインが生産されています。CARMでは冷涼な地区にある伝統的なテラス式畑の古樹のブドウを使用。独自に開発した1テラス1列の樹間に植え替え、灌漑をせずに十分な水分を確保する方法をとっています。やや温暖とされる区画では、丁寧なキャノピー・マネージメントにより太陽の光量を微調整。そして、これまでブドウ畑として使用されていなかった区画を開発する際は、自社畑の古樹から良質なものを選別するマサル・セレクションにより植樹を進めています。

D.O.P. ドウロとは

 ポートワインでも有名なポルトガル第二の都市、 ポート市から、ドウロ河をスペインに向かって上っていくと、ドウロ地方です。ゆるやかに流れるドウロ河を取り囲むようにぶどうの段々畑が作られており、2000年にはその美しい景観を讃えて「アルト・ドウロ・ワイン生産地域」として世界遺産に認定されました。

 標高の高い山脈のおかげで大西洋からの湿った風が遮断され、雨量が極端に少なく夏冬/昼夜の気温差が大きいことから、ポルトガル国内では勿論、世界的に見ても優れた生産地の一つとして注目されています。